第15回(平成22年5月13日)

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学術調査旅行(中国四川省の巻)

 2年前に、中国の四川省(しせんしょう)で大地震が起きた。成都(せいと)を中心に隣接周辺部に甚大な被害が生じた。私は仲間内で、ほとんど予備知識をもたずにゴールデンウィーク(4/29〜5/6)を利用して、中国の成都から世界遺産である九寨溝(きゅうさいこう)および黄龍(こうりゅう)方面に旅した。本来の旅の目的は、歴史的な遺跡などの視察であったが、勉強だけでは物足りないので3,000mから4,000m級の高地にあるチベット族やチャン族が多く生活している、九寨溝や黄龍などに足をのばしつつ成都を中心に行動したのである。九寨溝及び黄龍は、最近の新聞広告によくツーリストの募集が出る名所でもある。

 ところで、黄龍は鍾乳洞と同様で色々な形状の石灰岩の棚田状の奇形が地表に群れているところである。大地震が起こるまでは、水が流れて世界遺産になるほどの美しい景色を示していたはずであるが、大地震後、水脈に異状が起きたらしく全体の7割方は水が枯れてしまっている。少しがっかりした。が、気の遠くなる程の年月の間に形成された珍しい形状が一夜にして水が流れなくなってしまったというようなことだから、天変地変というべき自然の活動は恐い。中国政府の現地担当部署は枯れた姿に深刻であろう。水脈の代替をどのようにして探し出すか悩んでいるのではないか。現地は、今が春であるから雪解け水が豊富であるにもかかわらず、水が流れず枯れて干乾びてしまったということではどうしようもない。この状態が続くようであれば、世界自然遺産を返上しなければなるまい。

 また、思い出に残ったのは川劇(せんげき)である。北京を中心に行われている京劇(きょうげき)とは似て非なるもの。雑技団的な要素も含まれているが、もっとも感動したのは顔のお面が一瞬のうちに次々と変わっていく手品のような演技種目。その種明かしは分からない。地域を代表するようなローカルな劇団があるのには感銘を受けた。

 中国への旅は、はじめてではないが、中国奥地(秘境)においてもかなり所得格差が進んでいるようだ。携帯電話・パソコンやインターネット・大型アンテナによる宇宙衛星電波キャッチなどが地域の隅々まで浸透している状況から判断する限り、中国政府が情報を管理しようと思っても無理であろう。中国は深く情報がゆき渡り進化している。若者を始め国民全体が活発であり、おっとりして大人しく無気力な日本人は、中国人のバイタリティとハングリ精神にはすでに劣勢である。ただ、拝金主義で人のことはどうでもよく自分中心で、我先に突進しているように思える中国人を見るにつけ恐さを感じた。熟してきた日本に危機感の欠如を思わざるえない。世の中はグローバル化し途上国では、誰もが勝者を目指している。例えば、日本の国技の相撲を見ても日本人は外国勢に圧巻され侵されている現状が如実に物語っている。日本の将来を真剣に考えなければならない。政治家の方々の締まりの無い現況に、これでは困ると真摯に思う。存在感のある日本の将来を真剣に考えてもらえる人に、早くトップは変わって欲しい。そうでなければ日本は不幸である。のんびりしている時間的余裕はない。国が破綻しているギリシャの二の舞にならないためにも。

 さらに、特筆すべきは、日本の場合は電器製品等を始め基本的には安値に値引きした正札販売であるため値切っても安くしないという基本方針で臨んでいるが、中国や韓国などのアジア地域では、日本人相手の場合、日本人の感覚で少し安いという感じの値付けにしているが、中国の地元民の所得から判断すれば、相当高い水準となっている。だから、二重価格、三重価格であるため値切れば値下げする。ということは、相当にさばを読んだ割高で高目に価格設定して値札をつけているということの証左でもある。少しでも買う素振りをすれば、しつこく迫ってくるし、いくらなら買うのかと逆に問い質す。日本の感覚で希望価格の値を言うと、それ以上に値上げを要求して中国人が有利になるように交渉してくるのが実態であり常である。またガイドがバックマージンを目当てに息のかかった店に強引に連れて行き、日本人に買わせて鞘を取るのが中国流の商である。交渉の上手さで値段に差が出る。だから、温情の気持ちの人や気の弱い人は損をするのが現実だ。何度も同様の手口に遭って苦い思いをすると、中国人相手の商法に嫌気が差して中国での買い物や中国に旅するのが嫌になりだす。だから、中国商法は程々にしないと長い目で見れば、いい結果にならぬと思うのだが・・・。

 昨今は、中国マネーがすごい。日本に上陸し日本の企業を安い価格に交渉して現金で買う。脅威を感じる面もある。ただ今は、中国5,000年の歴史の中の一断面でしかない。中国の歴史には、革命やいろんなことがあったから、これからも何が起こるとも限らない。歴史は繰り返すかも・・・。

 なお、中国といえば、中国地方の岡山県を含む5県を示すことが多かったが、現在では、中国といった場合はチャイナを示すことが多くなったので要注意。例えば、中国銀行といった場合、岡山を拠点にする中国銀行か、中国の中央銀行である中国銀行か判断しにくいこともある。ことさように、中国という名が一般化されチャイナを思い浮かぶ場合が多くなった。時の流れだろうが、中国は侮れない巨人である。

 

おかやま適塾

馬場 勉


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