第62回(平成23年6月7日)

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策士、策に溺れる


 対岸の火事は大きく派手な方が、外部から見るものには不謹慎ながら面白い。現在の自民党及び民主党や民主党内の同士討ちは、ただ、興味本位だけではすまない深刻な事態である。すなわち、東日本地震の後始末や福島第一原発の切実な問題があるからである。

 子供の喧嘩かと紛(まが)うほどだが、前首相が現首相を“ペテン師”だというに至ってはただ事ではない。

 二世あるいは三世の総理は、苦労がない為か意外とあっさり総理を投げ出す。ところが、菅総理は市民運動家からのタタキ上げの裸一貫で、打たれ強く首相にまで上り詰めた。だから、ちょっとやそっとでは手に入れた権力を手ばなさない。政治家としての成長過程に大きな差があった。

 鳩山由紀夫前首相と菅直人首相がかわした“確認書”なるものは、故意か過失かわからないが玉虫色で決め手に欠ける甘いものだった。鳩山さんは育ちの良いボンボンだから、口約束でも相手は約束を守ってくれるものと信じた。ところが、菅さんは、上手くその場を言いくるめてすり抜け、衆議院における内閣不信任決議案を否決に導いた。自らの延命に成功した。したたかな面を持っている。だから、誰が何んといおうと居座ることができたと思って機嫌良く高笑いしたまではよかったのだが…。

 しかし、鳩山前首相は約束を守らないことは、人間にもとる行為で許せないと色をなして批難したものだから、自民党は勿論民主党内からも、一定の目途がついたら辞めると公言したではないかと大合唱され四面楚歌の状態に陥った。ついに、近いうちに総理を辞職するということになりそうだ。ただ、辞めるまでは信用できないが…。

 政局は、流動的だからどんな方向に進むか一寸先は闇である。したがって、安心しない方がよい。あてにならないのだから。

 

 先日、私は、政治家としての資質に関することで、まさか本気で言っているのかとびっくりこけた。テレビで公然と話したことであるから、プライバシーの保護はなく隠すこともないだろう。

 菅グループに「国のかたち研究会」なるものがある。その参謀を岡山 2 区選出の衆議院議員津村啓介さんが勤めている。菅総理と親しい間柄にある。さて、テレビの放映内容だが、津村議員曰く「菅総理は辞めるとはいっていない」と汗を流しながらさかんに主張した。コメンテイター陣は一同全員が唖然として、マスコミをはじめみんな辞めると演説したと思っていると、説明してもそんなことはないといい張っていた。空気(雰囲気)が読めない人のようだ。

 津村議員は、白を黒という人なのか、あるいは、本当に菅さんが辞めるとはいっていないと思い込んでいたのかわからないが、政治家は正確な事実の把握を前提に政局を考え、どうあるべきかを考えないといけない。故意に事実を曲げるとか、自分の都合の良いように解釈して歪曲したら間違った結論を導くことになり、取り返しのつかないことになる。このような歪んだ政治的資質の人に、かなり重要なポストに就かせて大手を振って世の中を歩かれては、国民(特に岡山)はたまったものではない。

 菅さんのために、親分を擁護するべく、あの手この手で守ろうとしたのだろうが、結果的には墓穴を掘った。信用に値しない人間と思われても仕方がない。

 菅総理といい、さらに、親密な間柄の津村議員といい、ずるがしこい策士であるが、自らの策略で失敗する結果を招くようになった。嗚呼…私は失望した。

 

    

おかやま適塾

馬場 勉

 

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