第157回(平成26年7月18日)

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秘密が漏れれば信用失う


 金儲けが目的で、会社が成立していることは間違いない。

 ベネッセホールディングスの会長兼社長に先月の 6 月 21 日に就任したのは、アップルコンピューター社長や日本マクドナルドホールディングス会長兼社長などを歴任した原田泳幸さんだ。金儲けを伝授しベネッセホールディングスを立て直そうと意気込んだところまではよかったのだが、思わぬ落とし穴があった。会員名簿が大量に流出していることが判明し、その解決に奔走することになるとは思いもよらなかったことだろう。流出したのは、グループ会社から外部企業に委託され、そこから派遣されたプロの技術者が持ち出したことが判明され、逮捕された。原田会長兼社長は信じがたいことだったろうが、情報が漏洩されていたのは事実だ。

 経営者としては優秀でも、今まではコンピューターや食べ物の会社だったから、定型性があるものや、ものを言わないものを相手にしていたのだが、教育を中心とする会社は相手が人間だから、それぞれに個性があり口を持った人間を相手にするのだから、今までの経験がそのまま活かせるかどうかは疑問だ。私は「赤ペン先生」の歴史から発展したベネッセコーポレーションだから、過去の倒産劇で債権者などに迷惑を掛けたことを肥やしに反省し慎重にやっているのかと思っていたが、顧客名簿は命の次に大切なものであるにも拘らず自社で厳重に管理せず子会社を通じて孫受けさせるような、いい加減さにまさかと失望した。従来どおりの体質が変らず、失敗が活かされていない。金儲けのことしか頭にないということだ。

 会社の建て直しのために、経営のプロの原田氏を迎える考えは金になればよいという金銭至上主義に、なりふり構わずに進んでいくから、足元をすくわれるのだろう。また、倒産しても再生するだろうが、もっと慎重に真面目にやることが成長の原点だと思うのだが。

 信用を得るまでには大変な努力が必要だが、信用を失うのは一瞬で無くなる。弊社のような零細企業でも、扱っている仕事は秘密事項が多いので十分に注意すると共に職員にも秘密保持に特別の喚起をしているところだ。それが効を生んでいるのか、長い間約 40 年間仕事をさせてもらっている。そこには、信用と信頼があるからだと考えている。

 原田氏の言葉によれば、 200 億円の賠償金を用意するとのことだが 1,000 万件以上の情報流出である。単純に計算しても 1 件当たり 2,000 円の賠償金だが、 500 円の金券を配って終結したいようだ。しかし、たかが 500 円もらっただけで、堪忍して欲しいというのは虫のよい考えだ。むしろ貰わない方がよい。ベネッセコーポレーションと手を切る(止める)方が得策かも知れない。現に 5 万件以上の問合せの電話がかかり 6 %にあたる 3,000 件が解約の申し出とのことだから、まだまだ退会が出るであろう。

 事業を立て直して金儲けの方法を伝授するという初期の目的は、当面は不可能に近い。注意しなければならないのは、会社が発展しないで赤字になれば、原田氏はクビを切られる可能性が大である。助っ人になった理由は、どうであれ会社立て直しの目的を達成しなければ用はない。ということでクビを切ってきた過去が物語る。社歴があるから、人情より金が目的だから、前の会長兼社長の福武さんはクビのすげ替えをする考えが常にある、ということだ。成果が出なければ即クビということである。そのことだけは間違いない。逆に原田氏の方から辞めていくかもしれないけれど。

 

  

おかやま適塾

馬場 勉

 

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