第11回(平成22年4月15日)

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高速道路無料化の指導理念は何か?

 例えば、子供手当・高等学校無償化さらに高速道路無料化などは、どのような目的のために公費をつぎ込んでやるのかという理念が必要だと思う。また、それに基づいた大義名分がなければならない。

 ここでは、特に“高速道路の無料化”について考察してみたい。地域活性化を目的とする政策のようなのだが・・・

 民主党がマニフェストで主張した。政権交代したので実行すべき約束ごとの重要な政策になったことは間違いなく、いざ実行する段になったら、いろんな考えが交錯した。雑音が多くまた資金不足(予算確保が困難)になって紆余曲折している。

 私は、すでに民主党が主張するよりも前から、ものの本に無料化を主張してきたのであって、それなりの根拠を持っている。ただ今の心境は、まったくのタダよりは安い交通料を支払ってもらう方が良いのではないかと考えが変わっているが確信までには到っていない。

 そもそも、クルマを保有し使用するとなると重量税などの税金やガソリンにはガソリン税及び消費税など2重にも3重にも税金がかかってくる。それゆえ、クルマをもたない層が増加している。これらの財源を特定目的の原資として道路を建設、維持してきている。確かに田舎の山間などでは、土砂崩れ防止用ネット等々道路を維持管理するために交通量の多寡にかかわらず多額の税金が投入されているのが現状である。

 本来であれば、高速道路もガソリン税等の特定財源で建設されるべきものであるが、何分にも財源に限りがあるために建設資金の調達を借金して、国土の均衡ある発展のために高速道路を造ってきた。現在も、造りつづけている。

 思えば、クルマはガソリン税等々を支払っており、国道は無料だが高速道は有料である。これは何故だろうかという疑問は湧く。道路の果たす役割には遜色がないからだ。

 道路は多目的に活用されている。即ち物流・観光・社用等々さまざまであり、代替として船・鉄道・バス等が併存している。それぞれに役割分担があるため、いずれか一つのみを重要視することはできないが、高速道のメリット・デメリットを考えて比較してみることが大切だと思う。

 高速道路を無料あるいは安くすることは、デフレ状態にある日本経済においてコップの中の嵐程度であるとしても、デフレ脱却の足掛かりになる。即ち、個人旅行を例にとれば、安い高速道路の交通料につられて外出するようになる。人が動けばお金が落ちる。お金が回転すれば経済は活性化する。デフレから脱却し、さらにインフレへとつながってゆくことになるはずだ。「風が吹けば桶屋が儲かる」式の経済循環図式である。観光は、もともと不況構造業種である。なぜならば、正月・ゴールデンウィーク・お盆の時には、満杯になるが、平素は閑古鳥が鳴くような時期が続くため格差が大きすぎて雇用対策や経営などが難しい職種なのである。

 また、現行の高速道路割引制度の土・日・祝日のみの割引が適用されると、土曜日は満杯で宿を予約するのが難しくなるが、平日はガラ空きという偏りが著しい。

 私は、四国88ヵ所巡礼を趣味としている旅人だが、かんぽの宿とか、休暇村で宿をとるのは相当先でないと予約することが困難なのが現実である。

 だから、土・日・祝日に関係なく平日も割引というより安くすれば平均化されて利用されやすくなるはずである。毎日が休みという高齢者や平日に休みをとる業種の人も多いからだ。今の料金体系で、岡山から瀬戸大橋を渡り88ヶ所を遍路すればガソリン代と通行料で1万円かかる。これなら、まだ楽しみに四国88ヵ所を廻れるが、橋を渡るのが3,000円になれば倍の費用はかかるから行くのを控えるようになるであろう。ちなみに、かんぽの宿などには5月までは予約で一杯だが、6月からは交通料が高くなるから少ないそうだ。

 高速道路を利用するメリットは、走行スピードが早いため燃費が良くてガソリンの消耗量が少なくて済む。また、交通事故発生量が少なくなるので損害保険料が低額でよくなる。高速道を使うものが受益者負担の考えのもと応分の負担をせよという考えからすれば、ガソリン税等々を支払っているうえ交通料(通行料)を支払うのだから、タダで使用しているわけではなく負担はしていることになる。クルマを持たない人がクルマを持った人に対する嫉妬の面もある。すなわち、タバコを吸わない人がタバコを1,000円にしろというようなものだ。排気ガスが多くなるというが、山の中だから森林が酸素に化学反応してくれるなどいい点はある。国民が旅を楽しみデフレを解消させる経済効果等々と比較したらどちらがよいのだろうか?

 問題点として、代替の船が廃業するとか、いや、しないとかという政治的策略のために、これらの問題に調整かつ対応するという理由で、本四架橋のみ高い交通料(3,000円)に設定するとのこと。しかし、これは基本的な公共事業対応の現実を忘れた議論である。すなわち、橋が架かる段階で船会社等の関係者には営業補償がなされている。しかるに、橋の料金が相対的に高かったため船に乗るようになった。よって、船会社は、濡れ手で粟をつかむような状態が続いていたのである。それに慣れていたので従来の価格設定が当然と思い込んでいたふしがある。ところが、ここにきて交通料を安くされると船会社等が困るといわれても、すでに補償していることだから「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということになりかねない。

 その他、深夜バス・鉄道などの影響は大きいが、安くすることにより新たな旅行者等の需要を喚起することになる。クルマはガソリン税と消費税その他の税金も支払って走行しているということを忘れてはならない。要するに、高速道路を無料化あるいは安くすることにより、何を政策目的とするのかという根本的な話がウヤムヤで議論をされていないところに問題がある。一番の狙いは、国民に休暇を与えてゆっくり旅をしてもらうために、足代を安くして多くの人に外出してもらう。菓子箱の一つでも土産に買ってもらって経済活性化に努めてもらうという考えも大切なことであるし、物流も安くし運送業者の所得を多くし、雇用の安定を図るため月給を高くするなど波及効果は生じる。また観光業者を不況業種から脱出させるための有力な手段でもある。新幹線の代金は合理化・省力化でもっと安くすべきだろう。

 確かに、現状を評価しても高速道の料金を安くすることによりクルマの交通量は増加した。特に軽四が多く走行するようになった。家族連れが目立つ。なお、橋のような構築物はある程度使う方が長持ちするはずである。使い過ぎは痛みが激しくなるが、ほとんど使われないのもかえって良くない。適度に使用する方が錆付かなくて快適に維持管理できる状態になると思う。このことは機械もの全体について言えることだから、高速道路のような構築物にも当然当てはまることだ。また高速道路全体を総合的プラントとみて、サービスエリアやパーキングなどの売り上げ利益を、全体的な高速道路会社の収益として損益計算すれば、交通料を常時1,000円にしても多くの利用者が使用しかつ購買し消費することにより収支は成り立つはずである。仮に、赤字になるとしてもガソリン税等々を支払っているのだから補填すればよいのだ。それが政策という視点からの妥当な方策である。思うに、国土交通省の官僚や大臣は、自ら高速道路を自分のお金で利用していないで机上の想定による計算値で考えているのではないかと思う。どのような図式を考えているのかを明らかにすべきだと思う。

 要は、「角をためて牛を殺す」ことがないようにすることだと考える。コップの中の嵐であってもデフレ対策にはなる。デフレ脱出の一歩であるから、安い交通料で不要不急の観光目的等々であってもクルマが多く動いて世の中をかき回すことが肝要である。

 

おかやま適塾

馬場 勉


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